トランプ旋風が世界中に駆け回っている。わが国などはあたふたと小船が大海で右往左往している風景だ。
トランプ氏のTPP離脱宣言はどうも本気度を増してきたようだ。これもあれも、本質は中国をどう意識しているかを見落としてはいけない。
TPPは中国を除外した太平洋沿岸地域の経済、貿易秩序の構築である。体良くいうならば中国を押さえ込む意思が濃厚に感じられる。
極端にいうならば、アメリカという国は輸出するものが何もなくなってしまった国になってしまった。金融技術を駆使してかろうじて呼吸しているイメージの国になりつつある。ここでいえることは、アメリカは世界を必要としている。生きてはいけない。わが国やヨーロッパは、極端にいうならばアメリカがなくても生きていける。そのような相対関係になりつつある。
こういう視点が正しいとするならば、アメリカの今後の戦略というものが見えてくるはずだ。
トランプ氏が国内のインフラを大々的にやろうとするとき、はたして国内の資金のみでやりおおせるだろうか。たぶん無理であろう。財政赤字がGDP水準になっている現状から考えて、共和党に根強い健全財政派を説得はできないであろう。そこで考えられるのは、中国のAIIB銀行やカナダの動向に歩み寄らざるを得ない。中国の台頭を押さえ込むだけしか脳のない戦略はそうそうに捨てやられるはずだ。
中国が日韓の従来通りの対米従属を認め、またオーストラリアを中国側に強力にオルグするようなことさえなければ、あなたの東アジアにおける覇権を認めましょうとなりえる。
この時点でわが国としては対米従属の背景としての仮想敵国中国は意味を失うことになる。尖閣に平静が訪れることになる。
アメリカ軍が沖縄に駐留する意味が相当に失われることになる。
アメリカはまもなくアジアインフラ投資銀行であるAIIBに加入する可能性が濃厚となる。
では、先進国のなかで最後まで参加していないわが国はどうあるであろうか。まちがいなくアメリカの判断に従い加盟するものと考えられる。
まもなくプーチン氏は訪日するが、つい先頃のジャブはたいしたものだ。北方領土でミサイル発射を見せつけ、暗にこの領土はわが国のものだとの意思表示をなした。国際政治はトップの仲良し、を積み上げる以上のシビアさを含んでいることを見せ付けるものだ。
安倍氏のチャレンジする前向きの姿勢だけは最高に評価しないといけない。
By K.Wada